ひつじ、手焼き、月光のようなやわらかさ

 「ツキ」の有無。
 うーん…これって難しいですよね。今年は年始から病気が続いてツキが悪い…かと思いきや当コミュニティ(Shizuoka ShutterBugs)のような出会いもあったり、アンビバレントな感じ!

 ご挨拶が遅れました。こんにちは、わたなべです。
 さて、2023年7月23日の活動報告は当コミュニティ立ち上げメンバーの1人であるmihoさんが書くはずだったんですけど、コミュニティ代表のりょんりょんさんは「トゥクトゥクと愛について語ってほしい」なんて私に要求してきたんです。無茶苦茶ですよね?
 そういえば今回も集合場所を「フィンランド」なんて言い出していたよなぁ、あの人。どうやら、うちの代表は難解な人なんだ、きっと。
 まぁいいや、今日もツキに恵まれているから。なぜって、森本裕香さんの個展『白黒羊』を見ることができたから。

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森本さんのインスタから

 「ツキ」といえばアポロ11号。人が月へ行ったのは今から54年前、1969年の7月20日。その時は有史以前より人と共にあった「歌」も一緒に月面へ持ち込まれたんですって。それがフランク・シナトラがカバーした『Fly Me to the Moon』。実は私は映画の『The Dish』(邦題:月の羊)(※1)が大好きなんで、この曲を聴くとワクワクしてしてしまう。
 でもなんで月の羊なんだっけ?そういえば羊も人類と長い間一緒にいた生き物のはずなんだけど、私たちは悲しいくらい羊という生き物の実態を知らない。ふわふわとか、贖罪の生贄とか、ジンギスカンとかそんなイメージ?あくまでイメージでしか知らない。そう、ペガススや麒麟みたいな存在になりつつある。
 でも大丈夫、この個展へ行けば16年も羊と向き合った森本さんと森本さんが見た羊がそこにいるから。実際の羊って奔放で汚くて小枝がたくさん挟まっているんだって!知ってた?

 少し頑張りすぎた、でもまだ頑張れそうなF2フォトミック(※2)と万全なトライX(※3)から紡ぎ出された原板(※4)。そこから丁寧に手焼き(※5)された写真の生き物たちは柔らかい光を受けて木々の根や柵に頭を突っ込んでいる。あぁこれが羊なんだなって。それこそ月に住んでいる羊たちもこんなんだろうなぁと思いました。
 今や「古典的」なんて言われてしまう手法も、常に人と在り続けたのに「忘れられて」しまった生き物も、そこに確かにいるんです。記憶は記録、フィルムと印画紙は物質として100年は持ちます。でもその記憶の器は私たち一人一人なのです。ぜひ見てきてください、現地で、月と同じ反射光で。

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森本さんのインスタから


 というわけで今回は森本裕香さんの個展『白黒羊』を僭越ながらご紹介いたしました。
 静岡の開催は7/22(土)~7/28(金) ボタニカ・アートスペース(ボタニカ3階)です。京都でも9月にやるみたいです!
 ひとつの被写体にひたすら向き合う姿勢って素敵ですよね。なんだか愛の理想みたい。
 トゥクトゥクは入ってないけどこれでいいかな、りょんりょんさん?ねぇ、次は私を熱海へ連れてって?Fly Me to the Atamiだよ!(雑な回収)
森本さん、素敵な展示と細かな解説、ご案内、本当にありがとうございました。

※1 2000年に作られた映画。オーストラリアの片田舎のパークス天文台が急遽アポロ11号の無線を中継した実話を元にしている。
※2 ニコンのフィルムの一眼レフカメラ。フォトミックは露出計付きのモデルでロボコップみたいな頭が特徴。フルメカニカルなすごいヤツ。
※3 米コダック社のモノクロネガフィルム。万全。
※4 現像されたフィルムのこと。
※5 フィルムに当てた光から印画紙を焼き付けて現像すること。昔の刑事モノで赤く暗い密室でぼちぼち話しているところにドジ刑事が飛び込んでくるシーンあるよね?それだよ!ちなみに機械焼きはスキャンしたデータをレーザーで焼く。

代表追記:「トゥクトゥクと愛について語って」とは発言しておりません。正しくは「写真展でわたなべさんの視点で感じた興奮と写真への愛を語って」でした。お詫びして訂正します。